2024年07月07日

S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)

S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



この趣味を長く続けていると、欲しい銃がトイガンとしてモデルアップされていないという悩みに直面することがあります。

マニアックなモデルはファンから根強い人気があるものの、
一般的には中小企業に相当するトイガンメーカー各社としては、この手のマイナーモデルをラインナップに加えることは、
商業的に成功するか、ある種の博打であり、かなりの高いハードルになるのではないかと思います。

僕にとっては、日本警察が一部で採用している、S&W M3913がまさにそんな銃でした。
通常の警察官はご存じの通り5連発の回転式が主流ですが、
銃器犯罪への対処が想定されている一部の部署で使用されている、米国S&W M39シリーズ直系の第三世代コンパクトオートです。

元々日本警察拳銃の大ファンで、その魅力にどっぷりはまっていたので、M3913は憧れの的だったのですが、
当然トイガンメーカーからはモデルアップされておらず、一部の業者(旭工房、マッドポリス等)がカスタムしたものがヤフオクにごくたまに出回る程度でした。

どうしてもM3913が欲しい・・・そんな時、久しぶりに僕にモノづくりの神様が降りてきて、呟かれました。
『ないものは、つくってしまえ、モデルガン』

今や発信活動の拠点をTwitter(X)に移してしまっており、久しぶりの投稿となり恐縮ですが、
今回は僕がマルシンのM39をベースに気合と情熱だけで作り上げてしまった、
S&W M3913モデルガンの製作過程をご報告したいと思います。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



今回、2機の試作機を製作。
左が初号機、右が弐号機となります。
元々は初号機のみ製作するつもりでしたが、
色々納得がいかず、もう1機作ってしまった次第です(笑)。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



まずベース機はマルシンのM39にしました。
MGCのも中古市場で割と数が出回っているのですが、
既にメーカーが存在しておらず今後の部品入手性への不安があり、
マルシンのほうが良さそうと判断した次第です。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



製作前に比較と現状把握をしたのですが、実は一筋縄にはいかないことが判明。
単純にスライド、バレル、フレームをぶった切って塗装するだけではなく、
そもそも世代差が伴う大きな違いが両者にありました。

 ・バレルブッシングの廃止によるスライド前端形状の違い
 ・バレル形状の違い
 ・アイアンサイトの違い
 ・フレーム形状の違い(グリップの角度の違い含む)
 ・グリップ固定方法の違い
 ・サイドプレート形状の違い(第三世代はスライドストップリリースレバーを押さえる機能も兼ねる)

等々・・・
これらの問題を一つ一つ考えながら、解決していきました。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



まずはスライドからぶった切り・・・



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



ブッシングレス化に伴い、スライドに細工を施します。とりあえず適当な径の塩ビパイプを切り出しやすりがけしてサイズ調整。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



それをスライドにはめ込み接着し、バレルスペーサにしました。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



ブッシングレス化によりリコイルスプリングが抜けてしまうので、固定用にサイズ違いのアルミパイプ2種を切り出し・・・



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



スライドに埋め込み接着。これでリコイルスプリングが固定されるようになりました。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



バレルもこんな感じでぶった切り・・・




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



先っちょだけ接着し、やすりがけして独特なくびれ形状を作りました。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



スライドとバレルを組むとこんな感じに。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



リコイルスプリングガイド等をぶった切り。
リコイルスプリングは最初純正を切って入れてみたものの、線径が太く、バネ自体も硬く短縮には向かなかったため、
後により線径が細く柔らかいものを業者に発注しました。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



アイアンサイトは、他モデルのものを加工して流用。
初号機はマルイM45A1用のサードパーティ製(3Dプリンター品)を加工しましたが、その業者の対応がイマイチだったので弐号機では採用せず、
フロントはマルイP226用を、リアはマルイV10用を加工しました。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



エキストラクターについては、初号機はベースのマルシンM39そのままの機構にしたので、
マルシンのエキストラクターにアルミ板を貼っただけにしたのですが、これではリアリティに欠けるため、
弐号機ではマルシンのBHPミリタリー用を加工して取り付けました。

ちなみに、マルシンM39はブリーチブロックが前後に動いてしまうため、
エキストラクターのライブ化にあたりエキストラクターピンがブリーチブロックの固定ピンを兼ねる構造にしました。
これでブリーチブロックは後退位置で固定されます。
(ブリーチブロックを後退位置にしないと、スライドを目いっぱい後退させても弾が装填できなくなります。
M3913化にあたり、機構構造面のアドバイスを、M3913化カスタムの第一人者である港3号さん(Twitter(X)では『リオ』さんとして活動)より頂きました。有難うございました!)




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



マルシンM39は本来U.S.A.刻印の箇所が『J.S.A.』になっているので、
『U』になるように彫り直しました。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



さて、難しかったのがフレーム。
まず末端をぶった切るまでは良かったのですが・・・




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



M39とM3913ではグリップ前部の角度が違うため、グリップパネル前端の傾斜角に合わせて、前端をひたすら削って角度修正しました。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



グリップパネルについては、初号機はホーグ製、弐号機はS&W純正品を採用したのですが、
固定方法が異なるので、フレームはまったくの別物になりました。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



まず初号機は当時ホーグ製のグリップしか入手できず、入手した個体は本来付属しているねじや固定ブロックが欠品していたので、
フレーム後端にパテを盛り、穴を開け、六角ねじで固定する方式を採用しました。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



一方弐号機の時はS&W純正のグリップが手に入ったので、それに合わせてアルミ板を切り出して穴をあけて固定金具とし、
そこにグリップピンを通して固定する方式にしました。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



ちなみに純正グリップの内側には赤枠の突起があり、そのままではうまくフレームにはまりません。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



そこでフレーム内側の緑枠部分を削って、グリップ赤枠部とうまく噛み合うような構造に修正。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



修正後はこんな感じに綺麗にはまってくれました。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



ちなみに、弐号機で入手した純正グリップですが、実はM3913用ではなく、45口径のM4516用。
グリップ前端がM3913用よりやや厚く、マガジンキャッチ周辺の突起がやや出っ張っているのが特徴です。
M3913に使うには、前端部を加工してやる必要があります(このあたりの情報も港3号=リオさんからご教示頂きました)。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



前端加工後のグリップ。
ちなみに、マガジンキャッチの反対側もM3913っぽく形状変更しました。





S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



トリガーガードもM39とM3913では形状が異なり、
雰囲気を出すために何度もパテを盛っては削ってを繰り返し、
何とかそれっぽく仕上げました。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



ちなみにトリガーガードとグリップ前端のチェッカリングは、
当初筋目やすりで彫ることも考えたのですが、値段が高く技量的にも自信がなかったので、
WAのショーティ40から型取りして、プラリペアでパーツを作って移植しました。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



移植・接着したら余分な部分をカットし、フレームとの継ぎ目にパテを盛って目立たなくします。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



マガジンキャッチスプリングの位置がM39とM3913で異なるので、オリジナル位置をパテ埋めし、
新たに穴を設けました。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)




僕にとって最大の難関が、刻印の手彫り。
弐号機にはAで始まる警察管理番号も入れました。
ベースになるフォントをエクセルで作って印刷して貼り付け、
上からミシン針でひたすらツンツンしました。
ちなみに針はミシン用のものを削って鋭利にしたうえで、ピンバイスに取り付けたものを使いました。
(この技法は、我らトイガンカスタム界の巨匠、オラガバニストのあじゃさんにご指導頂きました。有難うございました!)





S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



ツンツンし終えたら紙を剥がしてひたすらホリホリ。
虫眼鏡を使いながらの作業です。
幸い僕はまだ老眼ではないのですが、それでもつらい・・・へたっぴですが3時間かけてなんとか彫り上げました。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



もちろん金属部品にも手を加えます。
ハンマーはちゃんとデホーンドタイプに加工。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



ハンマーピンを兼ねるサイドプレートはM39と構造が異なるので、
ハンマーピンは4×20mmの平行ピンを手配、
サイドプレート部分については、初号機はWAのショーティ40のものを流用、
弐号機はアルミ板から切り出して加工し、平行ピンに接着しました。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



マガジンも短縮加工。
末端に切り込みを入れ、横に曲げます。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



ある程度曲げて余分なところをぶった切ったら、適当な木片をはさんでバイスに固定し、
耳部分をハンマーで叩いてまっすぐに曲げてやりました(この技法もあじゃさんにご指導頂きました)。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



マガジンバンパーについては、マガジンの耳が通る部分だけアクリル板を積層にし、以下はパテを盛って成形しました。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)


S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



弐号機の塗装前状態。
塗装前にひたすらやすりがけも行いました。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)


S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



塗装はキャロムショットのスプレー缶を使用。
スライドとバレルはステンレスシルバー、フレームと金属部品はチタニウムシルバーで塗装しました。
スライドとフレームを塗り分けることで、S&W第三世代オート特有の雰囲気を再現しました。




S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



日本警察仕様の特徴であるランヤードリングについては、マルイのM9用を加工して取り付けました。



こんな感じで試行錯誤を重ねた結果、何とか完成しました。
製作期間は2丁で計3カ月という感じです。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)


S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)


S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)


S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)


S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)


S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



初号機である程度工法を確立し、弐号機で発展改良したという感じです。
急いで作ったので仕上げの粗さや雑さが目立ってしまったのが反省点ですが、総合的には満足です。

ちなみに日本警察に採用されているモデルは後期型ですが、
刻印がどう頑張ってもレーザー刻印じゃないと彫れないものでしたので、
あえて、『1991年に前期型がごく少数試験導入された』という架空設定で、前期型にしました。

4月にエイプリルフールネタとして思いついたことがきっかけで、まさかここまで形にできるとは思いませんでした。
今回の企画に際しご支援・ご指導頂きました皆様には、この場を借りて感謝御礼申し上げます。

今回はここまで。ではまた。



S&W M3913 モデルガン(マルシンM39ベースカスタム)



SPECIAL THANKS:

港3号(=リオ)様
オラガバニスト あじゃ様



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Posted by Top Gun at 15:25│Comments(0)カスタム
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