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Posted by ミリタリーブログ at

2023年09月09日

マルシン ポリスリボルバー(ニューナンブM60) 2インチHW Xカート







日本とはモノづくり大国だなと改めて感じる今日この頃です。

かつて日本人には作れないと言われた自動車は、よく走り壊れないと評判で、今やトヨタをはじめ名だたる日本車メーカーが欧米にも工場を作るほど、世界中に浸透しています。
ウイスキーも鳥井信治郎と竹鶴政孝によってジャパニーズウイスキーが確立され、本場スコッチにも負けない味と品質で、世界の品評会で数々の賞を受賞しています。

近年はさすがに海外勢に押され気味ですが、今でもメイドインジャパンはひとつのブランドだと思うのです。

しかし、そんな日本も苦手とする分野があります。それは銃。
元々日本は東アジアとしては早くから近代化・工業化に成功し、小銃開発については欧米列強にも負けない技術力を有していましたが、
特に拳銃においては、南部麒次郎によって開発・量産化が実現したものの、よく言えば独創的、悪く言えばゲテモノ的で、とても欧米には太刀打ちできない代物でした。

戦後、敗戦国日本の小火器製造技術は衰退の一途をたどり、日本の治安維持の最前線では旧軍の骨董品か米軍のおさがりを渋々使う状況。新調できても海外製が一般的でした。
平和とは非常に貴重で大切に守るべきですが、一方でその維持に必要な技術の衰退を加速させるという矛盾をはらんでいるのです。

そんな中、あの南部麒次郎をルーツに持つモノづくり企業が開発した、日本の拳銃があります。
現在でも一部で現役バリバリの回転式拳銃、ニューナンブM60です。

今回は、そのニューナンブを模したマルシンのロングセラーモデル、ポリスリボルバーをご紹介します。



New Nambu M60 revolver of the Nara Prefectural Police.jpg

k_shirai_95, CC 表示-継承 4.0, リンクによる



実銃のニューナンブM60は、新中央工業が1950年代に開発した国産の警察向け回転式拳銃。
装弾数はJフレームと同じ5発で、米国Smith & Wesson製M36チーフスペシャルを参考にして開発したようです。
バレル長は主に制服警官向けの3インチ(77mm)銃身モデルと、私服警官向けの2インチ(51mm)銃身モデルの2タイプがあります。
量産は1960年から1996年前後まで行われ、生産時期によってシリンダーラッチやグリップの形状違い等、いくつかのバリエーションが存在します。
現在はSmith & Wesson M37エアーウェイトやM360Jサクラ等の後継機種がお巡りさんのメインウェポンですが、ニューナンブもまだまだ現役。
特に3インチモデルについては命中精度の良さから、射撃競技会で活躍しているとのことです。

かつてはお巡りさんの代名詞だったニューナンブも、最近は後輩拳銃に押されっぱなしで、メディア露出も少なくなってきましたが、
コロナ真っ只中の2020年当時放映されたTBS系ドラマ『MIU404』で、機動捜査隊所属の主人公、志麻一未(演:星野源)と伊吹藍(演:綾野剛)の二人が携帯している描写がありました。
(1話の伊吹登場シーンで、弾と一緒に受け取っていたのが2インチモデルでした)

尚、開発した新中央工業は、旧日本軍の拳銃開発を手掛けた南部麒次郎が興した南部銃製造所が、1936年に昭和電機製作所と大成工業の2社と合併してできた中央工業をルーツに持ち、1949年に分離独立する形で発足した会社です。

1975年に日本ミネチュアベアリング(のちにミネベアに社名変更)の系列会社となり、1981年に完全に吸収合併されました。

さて、ここからは余談ですが、新中央工業を吸収したミネベアは、現在はミネベアミツミに名を変えているというのは周知の事実です。
このミネベアミツミについて、我々の界隈で名前はよく知られているものの、何をやっている会社かあまりよく知られていないと思いますので、ここで簡単にご紹介したいと思います。







ミネベアミツミは、ベアリング製造を祖業として発足した先述のミネベアと、ゲーム機向け電子デバイスやアナログ半導体で知られるミツミ電機が2017年に経営統合して誕生した、金属加工部品・電子部品製造メーカーです。
世界27か国に拠点を有し、売上高は2022年度実績で1兆2,922億円(営業利益:1,015億円)と、なかなかの規模をもつ会社です。
部品メーカーはB to B企業ですので、一般にはあまり知られていませんが、実はミニチュアボールベアリングでは世界シェア60%、一直リチウムイオン電池保護ICでは世界シェア80%と、世界に誇る技術を有しています。
また、M&Aによる事業拡大に力を入れた結果、ベアリング、モーター、センサー、半導体、コネクタ、スイッチ、車載用部品等、多彩な製品をラインナップするに至りました。
我々が日常で使う工業製品の何かに、ひょっとしたらミネベアミツミ製品が入っているかもしれません。
(ちなみに、旧ミネベアの製品には、Nippon Miniature Bearingの頭文字をとった、NMBのロゴが印字されます。ベアリングやモーターに限らず、銃器にも刻印で入ります。)

尚、旧ミネベアが新中央工業を吸収合併した理由については、おおやけにはされていません。
ある文献では、新中央工業の電磁クラッチの技術を欲したため、と言われていますが、真相は定かではありません。

そう言えば、最近ミネベアミツミのCMがリリースされたようですので、ご参考まで。








トイガンとしては、ガスガンはマルシンとハートフォードの2社のみがラインナップ。
特にマルシンは8mmBB弾モデルから現行の6mmXカートモデルまで、細かな改良を経て販売されてきたロングセラーモデルです。
最新ロットが再販されてから市場は欠品状態で、メーカー再生産待ちが続いている状況ですが、
今回、最新ロットではありませんが、6mmXカート仕様の程度の良い中古が入手できましたので、レビューしていきます。






最近のマルシン製品の梱包箱は非常にシンプル。
昔は箱一面に製品写真がプリントされインパクトがありましたが、
コスト削減を狙ったのか、無地の箱に製品シールを貼ったおとなしいパッケージです。








HWモデルなので小さくてもずっしり重く、質感も良好。
特徴的なニューナンブのデザインをよく再現できていると思います。






マズルまわり。
ニューナンブらしい先細りのバレルを再現。

ニューナンブと言えば3インチ!という方も多いかと思いますが、
個人的には2インチのスナブノーズが大好き。

特に僕は『踊る大捜査線』等の刑事ドラマの影響でニューナンブ好きになったので、
ニューナンブと言えば2インチです。

マルシンのポリスリボルバーは元々8mm口径で設計されたので、
6mm化のためにインナーバレルの外側にさらに真鍮製パイプをかませる構造をとっています。
ただその分真鍮の光沢が目立ってしまうので、ここは黒染で目立たなくしたいところ。






シリンダーはベースとなったSmith & WessonのJフレームより径が太い一方、全長は短め。






シリンダー内部には空洞があり、安全対策が取られています。






右がマルシン製カート式リボルバーの特徴たる、Xカートリッジ。
ホローポイント弾に似せた外観を持ち、銀色の弾頭部分に1発のBB弾を込めます。
元々マルシン製リボルバーのカートは空薬莢タイプで底部にBB弾を装填する方式をとっていたため、
命中精度は最悪でしたが、Xカートにリニューアルされてから、命中精度が劇的に向上しました。
尚、最新ロットでは弾頭部分が銅色になったカッパーヘッドタイプになっています。

また、ポリスリボルバー専用のカートはダミーカートより径が太めです。






シリンダーにXカートを装填するとこんな感じ。
やっぱりレンコンはカート式じゃなくちゃ。






ダミーカートも装填できますが、Xカートより径が細いのでエジェクターがリムに引っ掛からず機能しません。






トリガーまわり。
トリガーガードの卵型形状が可愛くて大好き。

トリガーフィーリングはマルシンのカート式らしく、ダブルアクションはガク引き必至の激重トリガー。
一方シングルアクションは軽いので、命中精度を維持するならシングルアクション一択です。






ニューナンブと言えば、特徴的なシリンダーラッチ形状。
ポリスリボルバーでは1980年代頃製造の、後方に長く尖った形状のものを再現。

本来シリアルナンバーや新中央工業の社章が刻印されているであろうラッチ下部には、『POLICE REVOLVER』のオリジナル刻印。
元々8mmモデルには『8mm』の刻印もありましたが、6mm化されて『8mm』刻印が消え、最新ロットでは刻印が完全になくなっているようです。
こういうマルシンのアップデート、素晴らしいですね。







グリップは特徴的なあずき色のプラグリップ。
下部にフィンガーレストが付いた後期の仕様です。
実物は表面が梨地でザラザラしているようですが、マルシン製は光が映り込むくらいツルテカでチープな印象。
尚、実物は結構割れやすいんだとか。

グリップ内にガスタンクを内蔵する関係で、底部のバルブからガスチャージします。

警察用拳銃らしく、ランヤードリングを標準装備しています。






ハンマーは非常に滑らかでスムーズ。
安全対策で打撃部分には金属板が入っています。

グリップ上部に見えるのが独自のマニュアルセーフティで、前に押すとセーフティON。







サイドプレートにはメーカー名と日本製、マルシンが加入している全日本トイガン安全協会を表す刻印。
これも最新ロットでは消滅して無地になっています。







サイドプレートを外すと内部メカが見えます。

ちなみに、ポリスリボルバーの弱点がハンマー基部。
画像赤丸部分が構造上非常に折れやすく、僕もこれまでに何度も折ってきました。

最近はこれでも形状が見直され改良されたようですが、この箇所に負荷がかかりやすいのか金属疲労を起こすようで、
根本的な解決に至っていない模様です。






ハンマーが折れたときは、慣れない方はマルシンに修理依頼を出すのが吉ですが、
自力で直せる技量をお持ちの方は、パーツ注文しましょう。

まずはメールで在庫状況の問い合わせをします。
必要部品の部品番号と名称(いずれも取扱説明書の部品リストに記載)、必要数量を必ず入力しましょう。
早ければ翌日には画像のようにメールで単価と送料の回答が届きます。

その合計金額を現金書留で、マルシンに送りましょう。
その際、メールに記載された注文番号と部品名、数量、金額、送付先住所氏名を記入したメモを同封します。







費用を送ってから10日程度で、注文した部品が届きます(当方の場合は1週間程度で届きました)。
現金書留というのがちょっと不便でしたが、メールでの問い合わせから部品到着まで、非常に迅速丁寧に対応頂けました。
できればKSCのようにネット注文できるようにして欲しいですが、こういうアフターサービスがきっちりしているのはユーザーとしては有難いですね。







さて、ちょっと壊れやすいポリスリボルバーですが、驚いたのは命中精度。
Xカート化される前のモデルは、狙ったところにまず当たらないので、とりあえず弾が飛べばいい、、くらいの代物でした。
今回、8mから0.2gBBで5発を2セット、シングルアクションで撃ってみた結果ですが、なんと東京マルイの17×17cmターゲットに全弾命中という、
オートマチックもびっくりの集弾性を見せてくれました。
コイツ、できるぞ!!







ポリスリボルバー、何度も手にしてきましたが、Xカート化されてさらに魅力に磨きがかかったと感じます。
Xカート化前のモデルでは弾の出るモデルガンといわんばかりの、実用には程遠い、目も当てられない実射性能でしたが、
今となってはもう過去の話。シューティングにも使えるレベルになったのではないかと個人的には感じています。
(事実、このマルシン製Xカートリボルバーでシューティングマッチやサバゲーに参加する猛者もいるとかいないとか・・・)

残念ながら実銃はとっくの昔に生産終了し、オリジナルデザインの日本製拳銃が登場する兆しもまるでありません。
メイドインジャパンがもてはやされて久しいですが、冒頭の通り、特に銃器開発においては、日本は依然として後進国であると感じます。
国防に直結する自衛隊の小銃と違い、国内治安を維持する日本警察においては、国産拳銃という縛りはありません。
むしろ一般的に日本の法執行機関のみに販売先が限られる国産拳銃は、小ロット生産になりがちで、結果圧倒的物量を誇る海外製拳銃に比べて高価になる傾向があります。

ただ、日本のお巡りさんが腰にぶら下げる拳銃は、やっぱりメイドインジャパンであってほしいとマニア心に思うのです。

いつかまた、日本の治安と技術を守るため、純国産のポリスリボルバーが復活する日が来ることを願ってやみません。

今回はここまで。次回もお楽しみに。






参考文献:
ホビージャパン 『Gun Professionals 2015年9月号』
ホビージャパン 『日本警察拳銃』
ミネベアミツミHP
日本ベアリング工業会 『ミネベア株式会社 大森工場とその周辺』 https://www.jbia.or.jp/industry/members/35/minebeaoomori.pdf

  

Posted by Tommy 鷹志 at 17:40Comments(2)マルシン